大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(う)1367号 判決

被告人 須貝一正 外一名

〔抄 録〕

そして原判決挙示の関係証拠を総合すれば、まず本件犯行に至る経緯として次の事実を優に認めることができる。すなわち、被告人須貝は原判示の経歴を有し東京都議会議員であつたこと、被告人岡林は原判示のような経歴を有し東京都衛生局副主幹、次いで同局公衆衛生部食品衛生課長となつたこと、被告人岡林は原判示のような事情から被告人須貝父子と親密な関係にあり、ことに自己が右食品衛生課長となるに先立ち、被告人須貝の父正から衛生局の上司に対し被告人岡林を同局の課長に昇進させるよう再三口添えをして貰つたことなどから被告人須貝父子に深く感謝し、また被告人須貝が政治家として大成することを期待し、都議会議員としての議員活動の一助たらしむべく都政上の問題について説明しあるいは資料を提供するなど援助を惜しまなかつたこと、株式会社東京ストア(以下単に東京ストアという)取締役社長忠岡武重に関するいわゆるデスカウント、セイルス、カアー(discount sales car)(以下単にD・S・Cという)問題について原判示のような経緯があり、衛生局内部においてはD・S・Cの営業許可の方針がありながら既存食肉業者らの強い反対のため許可手続問題の解決の見通しが立たず、そのため忠岡が苦慮していたこと、被告人岡林は原判示のように被告人須貝に右D・S・C問題の経緯を説明すると共にパンフレツト等の資料を交付したりしていたこと、たまたま原判示のように東京ストアがD・S・Cにより無許可営業をするという問題が発生し、被告人岡林はこれを中止させようとして、昭和三九年八月二二日頃忠岡が出張で不在中であつたため同会社の専務取締役矢島健二郎を都庁内の食品衛生課に出頭させた際、被告人岡林は原判示のように、この機会に被告人須貝をして東京ストアとこれに反対する食肉業者との間の仲介役をさせて問題の解決をはかり、被告人須貝の政治的名声を昂揚する一助たらしめ、日頃の恩恵に報いたいとの考えから、矢島に対しD・S・Cによる無許可営業行為の即時中止方を申し渡すと共に、自己の名刺の裏に被告人須貝の連絡先の電話番号を記入して交付したうえ、「D・S・Cの問題は都議会議員である被告人須貝に頼めば早急に許可がおりるから同被告人とできるだけ早く会うように」という趣旨のことを申し向けて被告人須貝と早く会うように勧め(なお被告人岡林の検察官に対する昭和四〇年四月一五日付供述調書(記録第九冊二五三六丁裏)によれば、被告人岡林は矢島に右のように申し向けた同日早速被告人須貝の事務所に電話をかけ、その事務員に対し、被告人須貝に忠岡を伺わせるよう話したから伝えて貰いたい旨および車を近々停めるよう約束させた旨述べたことが認められる)、さらに同月二五日午前九時三〇分頃、矢島から被告人岡林との面談の模様を聞いた忠岡が被告人岡林を前記都庁内の食品衛生課に訪ねると、被告人岡林は忠岡に対しても矢島に対するのと同趣旨のことを申し向けて被告人須貝に会うように勧め、その場の電話を使用させて忠岡より被告人須貝の事務所へ、さらに原判示ホテルニユージヤパン七階の自由民主党青年議員連盟事務局に連絡させ、その結果同日忠岡が被告人須貝と会うことになつたこと、がそれぞれ認められる。また原判決挙示の関係証拠を総合すれば、昭和三九年八月二五日被告人須貝および忠岡が面談したとされている日時後間もなく忠岡が都庁内に被告人岡林を訪ねた際、忠岡が被告人岡林に対し、被告人須貝から一〇〇〇万円を要求されて困惑、畏怖している旨訴えるのを聞知するや、被告人岡林は忠岡に対し、原判示のように「あの先生は偉い先生だから他に金がいるんだろう。僕なら算盤をはじくね。経営者は利潤を追求するんでしよう。」等と申し向けたことが優に認められる。そして以上の事実に加えて、更に原判決挙示の関係証拠、ことに原審における証人忠岡武重の第一、二回公判証言(記録第三冊五四八丁以下、第四冊七七二丁以下、第六冊一三七〇丁以下)によれば、原判示のとおり、昭和三九年八月二五日午前一一時頃、ホテルニユージヤパン九階の「みずほクラブ」内において被告人須貝は右忠岡と面談し、その際忠岡に対しD・S・Cの許可を受けたいのなら一〇〇〇万円出して貰いたい旨、自分達都議会議員は右許可に賛成、反対どちらの側にもつき得る剃刃の両刃である旨申し向けて脅迫したうえ金銭を要求したこと、また右忠岡の第一、二回公判証言のほか原審における証人矢島健二郎の公判証言(記録第四冊六五二丁以下)によれば、原判示のとおり、昭和三九年九月上旬頃の正午頃、ホテルニユージヤパンの七階自由民主党青年議員連盟事務局内において、被告人須貝は右忠岡および矢島に対し、要求金額は五〇〇万円以下にはできない旨、都知事が許可する問題でも都議会議員の有力者がそれを延ばすとか許可しないこともできる旨申し向けて脅迫したうえ金銭を要求したこと、これらにより原判示のように忠岡らを畏怖させ忠岡らから金銭を喝取しようとしたがその目的を遂げなかつたことを十分認めることができる。

(石井 山田 渡辺)

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